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• イギリス在住12年 • フードスタイリスト リンクフリーです。 お返事が遅れることがよくあります。気長にお待ちください。 →ブログランキング 写真や記事の無断使用は固くお断りします。 copyright all content ©2007-10 kitsch-en ブログパーツ
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最近のイギリスの料理本や雑誌では、フォークを差し入れた瞬間にチョコレートが流れだすタイプの「温かいチョコレートケーキ」が流行りのような気がします。 こういうものは、写真が撮りやすい、、、訳がない! さて、この前の金曜日には、Step by Stepの「手順をふんだ、写真を紹介した料理本」のチョコレートケーキの撮影のお手伝いをしてきました。私が作っているところではなく、子供向けの料理本を沢山出版なされている料理研究家が「子供と一緒に作っているシーンを撮影する」とのお題で、私の仕事はその下準備。 材料を全部並べたり、泡立てているシーンではちょうどきれいに泡立っている瞬間が写真として撮られるように、丁度良い段階に準備したりということです。こういうこと、良くあるんですよ。有名料理人が料理しているシーンって、その人たちは大概そこでは料理してないから(汗) 前日、レシピを読んだり準備をしている段階で、「子供向けにしては、ちょっと味が大人すぎるんじゃないかなあ」と思っていたのです。大量のカカオ70%のチョコレート、バター、卵、少々の砂糖が入ったあまり甘くはないケーキで、消化も良くなければ、多分3歳以下だったら鼻血がでるんではないかという分量(失礼)。 しかもこういう類いのレシピはお菓子作りに慣れている人が、子供の まあ、そういうものが「子供に向いているか」という決断を下すのは、私個人ではなく、出版社やその研究家の意図と決断だろうな、とその日はStep by Step、撮影をしてきました。 こうやって、手順を一つ一つ写真を撮るうちに、泡立てた卵だとか、チョコレートの温度だとか、そういうものは化学反応ですからね、30分で作れるものを1時間半かけて準備されたものがオーブンに入ったところで、やはり最終的な見た目がかなり違ってくるのです。 結局その子供たちが介入して作られたケーキは、写真を撮ってもあまりきれいに見えないだろうなあ、と思っていたのは的中。既に分かってはいたので出版社の方々にも「最終段階の写真を撮る際には、また手早く作り直しますから」と言ってはいたものの、「電子レンジに入れれば大丈夫でしょう?」と言われる始末。 (うーん、世の中そううまくはいかないと思うんだよねえ)と思いながら、2時間後に冷めきったケーキを電子レンジに入れてみたが、やはりだめやねん。バターが分離してますよ。こんなん、写真は撮れないなー、というか、私は撮らないよ。 それを味見した出版社の人曰く、 「私、これ、あんまり好きじゃないわ。苦いしパサついてない?」 「多分それは電子レンジのせいじゃないかと、、、こういうものは作ってすぐでないと、触感が完全に変わってしまうんですよ。」 「ああ、ちょっと落胆したわ。これじゃ、使い物にならないわよね。」 「作り直しましょうか?」 「これじゃ分量変えないと、子供向けではないわよね。全シーン写真を撮ってしまったけど、、、大丈夫なのかしら。」 「、、、。」 結局その日は、最終段階の写真を撮るにはいたらなかったのです。 しかも、そのチョコレートケーキの見た目があまり良くなかったので(だから言ったのに!)怪訝な顔をされる始末。「この分量で良いのか前もって分からなかったのか」と言われ、確かに前日徹夜だったら試作できたかもしれないけど、私がそこまでの責任をとらなければいけないのかなあ、と。結局は私の責任かもしれませんが。 うーん、悔しいぞ。誰のせい? そのチョコレートケーキにはリンツのホワイトチョコレートトリュフが入っているのだけど、ミルクやダークは一般的に出回っていても、ホワイトは簡単にスーパーから手に入るものでもないので、セルフリッジまでわざわざ足を運んだのです。 家に帰った直後撮影のレシピ変更の連絡を受け「クランベリーが必要」だからと、再度ケンジントンのホールフードにまでいく始末。地下鉄の駅で事故があって、帰って来たのが夜の7時半。それからその次の日に撮影される予定のゼリーを作り始めたりして、終わったのが12時半。手が映るかもしれないよ、と言われていたので爪の手入れをし、マニュキアを塗って就寝は2時。しかもマニュキアは滅多に塗らないので、あの独特の香りのせいで眠れない。 そして翌日は7時にタクシーに乗って9時にサンバリー(ヒースロー空港の近く)着。軽く気持ちが悪い。薬をとってしのぐ。 準備したものは、結局撮影の時間が足りずに殆どがゴミ箱行きになってしまいました。こうなるんだったら、写真をとらないものの準備をしている間にチョコレートケーキの試作すれば良かったな。 今日作り直した際には、タイミングだとか、型に入れる分量、砂糖の量や粉の量のバランスなど、結局渡されたレシピとは随分違うものになったけれど、作りなおした甲斐はあったようです。でも、こういうこと、良くあるんですよ。 大概渡されたレシピ通りに作ると、失敗することも多いので(英国ではですよ、日本では割と信頼できますよね)私も殆どの場合家で試作してから撮影日に臨むのですが、今回はさすがにそんな時間がなかったんですね。一応変更した場合は、エディターさんや料理研究家さんに分量の変更のお知らせはするのですが、時々それが反映されずに「失敗する分量」で出版されてしまうこともあるのですよ。だから皆さん、英国のレシピはあんまり信用ならないんですね。信用できる研究家さんもいるけれど。 ちなみに私がレシピを載せないのにはそんな理由もあるんです。日本でも上手に再現できるものという確実性はないですもんね、材料をとっても脂質のバランスとかグルテン質の割合だとか、多少違ってくるので結果が変わってしまうんです。もし出す場合には、それだけの責任感をもって表記するつもり。 そして出来上がったこちら、見た目は大きめの型で作られたようですが、小さい縦長の型に半分生地を流し込んで、大きめの型の形に似せて作ったのです。この大きさ、形だと約30分位は形を保ってくれるので、撮影しやすい。 トップの写真、だんだん沈んでいってますが、潰れた写真は本に載せられませんからね。写真家とのチームワークにもよるのだけど、一発で照明などさらりと撮れる写真家はレシピのままで、沈む前に撮る。 もっと構図にこだわったり、時間がかかる場合は上の「似たような形」系。近距離で撮影すると大きさって分からないしね。 今回はちょっとした裏話になりました。 食べ物の撮影って、色々こつがあるんですよ。 kitsch-enの平日は毎日こんな感じなので、ブログもなかなか更新できませんが、毎日夜中までキッチンで格闘しているのです。これからもどうぞよろしく。
by kitsch-en
| 2008-03-17 08:20
| 仕事
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